良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因と症状
回転性めまいで、この病気だけは原因が全く他と異なります。
「良性発作性頭位めまい症」の症状は、頭位を変換した時だけ回転性めまいを起こします。
めまいが続く時間は30秒ぐらい、長くても1分を超えることはまずありません。
また、頭の位置を動かさなければめまいは起きないのも「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」の特徴です。
歩くどころか、立っていられない、または起き上がれないほどの回転性めまいが急激に起こるため、「大変な病気にかかった」と不安に思う方が多いですが、良性発作性頭位めまい症は、めまいが酷くても重篤な病気では全くありませんので、安心してください。
といっても、自己判断は禁物ですので必ず病院を受診するようにして下さい。
なぜ、頭を動かすとめまいが起こるかというと、内耳の中の、平衡感覚を感じる三半規管という場所に原因があります。
この三半規管の中はリンパ液で満たされています。ここに、「耳石」という炭酸カルシウムの粒が混入したために起こるのが、「良性発作性頭位めまい症」です。
なぜ、石が混入するとめまいが起こるかは、この後説明していきます。
まずは、「なぜ三半規管に石が入るのか」を説明します。
三半規管の中に石が混入するとめまいになる
▼なぜ三半規管に石が入るのか?
通常「耳石」は、三半規管の出入り口にくっついて位置している耳石器という部分にあります。
しかし、何らかの原因で寝ている間に耳石がはがれ、三半規管に入り込んでしまうことがたびたび起こるのです。
多くの場合、耳石が三半規管に混入する原因として以下の3つが考えられます。
- 打撲などの衝撃
- 老化による水分の低下
- 抗生物質などの薬
頭を強く打ったときなどに、その衝撃で耳石が三半規管に落ちることがあります。
幼児では、良性発作性頭位めまい症がみられることはほとんどありません。しかし、50代~70代では比較的多く見られることから、老化も原因のひとつと考えられます。
また、耳石器の耳石がはがれる副作用を持つ抗生物質が存在するという報告もされています。
ただ、良性発作性頭位めまい症(BPPV)の約50%は「特発性」といい、特に思い当たる要因がないのにある日突然起こるのです。
また、前庭神経炎が治った後に起こるケースも見られます。
さらに、耳石の成分は炭酸カルシウムであるため、カルシウム代謝異常がある骨粗しょう症が、良性発作性頭位めまい症(BPPV)と関連性があるという研究結果も報告されています。
▼なぜ、石が混入するとめまいが起こるのか?
平衡感覚を感じる三半規管の中は、リンパ液で満たされており、頭を動かすと、このリンパ液も一緒に動きます。
脳は、このリンパ液がどのように流れるかという情報をもとに、頭の位置などを感知しているのです。
このリンパ液の中に耳石が入ってきたらどうなるでしょう。
頭の向きを変えた時にリンパ液に流れが出来ますが、その時に耳石はリンパ液の抵抗を受けるのでなかなか移動しません。
水は空気の800倍の密度があるので、その抵抗で頭の動きよりも後から耳石が動くことになります。
そして、頭の位置が変わるので、耳石は重力にしたがって下に移動しようとします。
すると、耳石が移動することで新たにリンパの流れが起きてしまいます。
リンパ液が流れるということは、頭が動いたと見なされますので、耳石が移動しただけなのにもかかわらず、頭が動いたと勘違いしてしまいます。すると、「回転性めまい」が起きてしまうのです。
ちなみに、これは三半規管への耳石混入が原因ですので、めまいを感じても、メニエール病や内耳炎・前庭神経炎とは違い、耳鳴りは全く伴いません。
しかし、回転性めまいを何度も経験するため、吐き気や嘔吐、頭がボーっとする感じを覚えることがあります。
ちなみに、回転性めまいの原因となる病気で一番多いのが、この「良性発作性頭位めまい症」です。
女性で男性の2倍近く発症していると言われています。
三半規管は前半規管・後半規管・外側半規管の3つに分かれていますが、耳石が混入する確率は、後半規管が約90%、外側半規管が約15%、前半規管が5%程度と言われています。
どこに混入するかで、治し方が異なります。