脳脊髄液とめまいの関係
めまいと聞いて、脳脊髄液と思い浮かぶ一般の方はまずいないでしょう。おそらく、脳脊髄液という言葉さえ今までに聞いたことがないかと思います。それでも最近は脳脊髄液減少症という病気が見つかり、この病名で脳脊髄液という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
脳脊髄液とは、脳を包む膜(硬膜)と脳の間にある液体のことを言います。成分はリンパ液と同じです。※リンパ液は血液から血球成分を除いたもの(血漿)とほぼ同じである。
硬膜の外側が頭蓋骨です。脳脊髄液は、名前の通り脳と脊髄の周りを循環している液体です。しかし、脊髄から脊髄神経沿って神経の末端まで運ばれています。ここでは、この脳脊髄液が、なぜめまいと関係があるかというお話を解説いたします。
▼脳脊髄液は頭蓋骨が循環している
脳脊髄液はゆっくりですが絶えず循環しています。静脈から脳脊髄液が作られ(というより染み出てくる感じ)、脊髄硬膜に沿って流れ、最後にはまた静脈に戻ります。この脳脊髄液の循環を促しているのが、頭蓋骨なのです。実は頭蓋骨は一つの骨ではなく、立体パズルのようにいくつもの骨が組み合わさって出来ています。
そして、その一つ一つが微妙に連動して動くことでポンプのような作用をし、脳脊髄液を循環させていると言われています。オステオパシー・カイロプラクティック・整体などの頭蓋骨矯正術では、このような説が当たり前となっているのです。
血液は心臓がポンプ役になっておりますが、脳脊髄液は頭蓋骨がポンプ役になっているということです。血液のように早く動く必要のない脳脊髄液は、頭蓋骨の微妙な動きと静脈から新たに作られまた静脈に戻るという小さな作用だけで十分なのです。
▼脳脊髄液とめまいの関係
では、その脳脊髄液とめまいの関係をお話ししていきます。頭蓋骨の動きが悪くなると、脳脊髄液の循環が悪くなり、脳脊髄液の圧力が高くなります。これを「頭蓋内圧の上昇」と言いますが、頭蓋内圧が上昇すると、脳脊髄液はどこかに移動しようと思い、軟らかい部分を膨らまそうとします。
しかし当然ですが、脳脊髄液の周りは堅い頭蓋骨ばかりですので膨らむことは出来ません。そのため、どこかに脳脊髄液を逃がして、圧力を下げようとします。すると、蝸牛小管と前庭水管という管から脳脊髄液が流れ出ます。
蝸牛小管と前庭水管の先には、音や平衡感覚をコントロールしている内耳があります。こうして脳脊髄液が内耳の中に入り込み、内耳の中のリンパ液と混ざり(成分は両方ともほぼ同じ)、今度は内耳のリンパの圧力が上昇してしまうのです。内耳には、リンパの流れなどで体の動きを察知している神経があり、リンパ液の圧力が高くなることによりその神経が誤作動を起こしてしまいます。
これによりめまいになります。近くには音を感知する神経もありますので、めまいと同時に耳鳴りを併発することもあります。こうして、脳脊髄液の循環不足によりめまいが発生するのです。